一年間ありがとうございました(第15回)

February 3, 2009 7:01 PM

ACTIONに参加した昨年1年間は、日本にとっても、食にとっても激動の始まりを予感させる1年でした。食に関しては、食の安全が脅かされる事件が立て続けに起き、日本の食の安全管理の脆弱さを露呈させてしまいました。食品偽装は、手口が複雑になり、偽装した食品の金額も莫大な規模になってきました。
今、誰のために、どんなACTIONを起こすのか。日本の将来を左右する大きな岐路を迎えています。政治家や官僚はもちろんのこと、私たちも何らかのACTIONを起こしてみようではありませんか。大げさなことではなく、選挙で投票することも、お客様相談室に問い合わせてみることも、表示110番に電話することも、インターネットに書き込みすることも、テレビ番組に意見や感想を言ってみることも、食品を買うときに裏の表示をチェックすることも、お店に「これはどこの産地なのか、何が入っているのか」を聞くことも、みなACTIONです。
どんな些細なことでも、ちりも積もれば日本を変えることの原動力になります。自分のできる範囲でACTIONを起こしましょう!

私自身も、消費者の立場を忘れることなく、私なりのACTIONを起こしていこうと思っています。1年間、ご声援、ご意見、ご感想、ご批判など、多くの方々の声に励ましていただきました。本当にありがとうございました。

2009年 ACTIONコラム 【食の安全】 縦割り行政の弊害は続く? 垣田達哉

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消費者庁創設は延びてよかった (第14回)

November 27, 2008 5:37 PM

 麻生首相は消費者嫌いなのでしょうか?消費者庁に関する発言が、とても少ない気がして残念です。解散が先延ばしとなり、消費者庁に関する国会審議も行われず、来年4月の消費者庁創設は、事実上とん挫してしまいました。
 早くても来年10月か再来年4月になるのでしょうが、その前に必ず総選挙が実施されます。自民党が勝てば消費者庁が作られるでしょうが、民主党が勝てば消費者権利院が創設されることになるかもしれません。消費者庁創設に暗雲が立ち込めています。

 ただ私は、結果的に消費者庁創設が延びたことは、よかったと思います。消費者庁構想ができてから、全国の消費生活センターや相談員の方々への講演の折に、生活センターの所長や職員、相談員の方々と消費者庁について、いろいろな意見交換をさせていただきました。皆さんとお話をすればするほど「来年4月の消費者庁創設は、とても無理だな」という思いを強くしました。

 何よりも問題なことは「人」がいないことです。消費生活センターで働く相談員は、相談員資格を持っていなければなりません。いくら需要が増えたからといって、試験に合格しなければ得られない資格であり、相談員資格が特別人気があるわけではありません。というよりも、人気がない資格といえるかもしれません。地方自治体が、一定の相談員を確保することは容易ではありません。
 しかも、前にも説明したように、現状の相談員の方々の業務は、悪質商法や多重債務対応がほとんどです。食に関する相談があったとしても、ほとんど保健所や農水省関係に、丸投げしています。食の安全や食品表示に精通している人は、ほとんどいないでしょう。

 内閣府は、消費者庁のパンフレットで「たらい回しはしない」と主張していますが、食の問題を消費生活センターで自己完結できるところは皆無といっていいでしょう。結局、どこかに振らなければなりませんが、そうなれば、窓口の複数化になるだけです。
 しかも、食の問題に精通しない人が相談を受ければ、担当窓口に正確な情報を伝えられるかどうか、大いに疑問です。それならば、現状のように、保健所や表示110番に直接連絡した方が、より早くより正確に伝わります。「餅は餅屋に任せた方がいい」とおっしゃる現場担当者の方もいます。

 また、政府・自民党案では、景品表示法や食品表示関連法律の所管が、すべて消費者庁に移管されるということです。消費生活センターのなかで、これらの法律を理解し、相談があったときに対応・処理できる人がいったい何人いるでしょう。皆無といってもいいでしょう。現在の所管官庁から人を移動させるといっても、現状より大幅な戦力ダウンになることは間違いありません。

 消費者庁でいったい何ができるのか、そのためには何が必要なのかを、もっと議論するべきです。闇雲に創設に突っ走っても、消費者に不安と不利益を与えるだけです。消費者庁創設が延びたことを幸いとして、国会で大いに議論を戦わせていただきたいものです。


PCヘルパー さんへ
 おっしゃる通りだと思います。中小企業が食の安全にかけられるコストは限られます。一つは、大手企業が様々な取り組みを始めれば、システムコストが低減され中小企業でも食の安全に対するシステムを購入しやすくなると思います。もう一つは、当然ながら、国の問題です。輸入検疫でいつも問題になりますが、人員の増強や設備の確保などみても、わずかの増加にとどまっています。食の安全に大幅な予算を与えることをしようとしていません。それは票にならないからでしょうが、税金の無駄遣いが多い現状を見ると、今の2倍の予算をかけてもいいと思います。

タカ さんへ 
 おっしゃる通りです。私は、日本の第一次産業をどうするのか、もっと国民的議論にしなければいけないと思います。自民・民主両党とも、ばらまき政策ばかりで、日本の将来を真剣に考えているのか大いに疑問です。農業だけでなく、水産業、畜産業も「待ったなし」の状況です。たとえ保護主義的な要素が強くなっても、第一次産業を守ることは不可欠だと思います。いくら頑張っても、現状では自給率が100%になることはありませんが、40%でいいわけではありません。この問題こそ、農水省が最重要課題として取り組む問題ではないでしょうか。第一次産業育成以外の仕事は、農水省から取り上げるべきです。

くまごろう さんへ
 私も、消費者が一番不利益を被っていると思います。事故米不正転売事件も「最大の被害者は消費者」だと思います。食べてはいけないものを食べさせられたのは消費者であり、事業者は、知っていたかどうかは関係なく、消費者に食べてはいけないものを販売したり、提供していたのです。農水省の責任が重いことは当然ですが、事故米の被害者が公表された事業者だけのような扱いをするところ(行政及びマスコミ)を見ていると「やっぱり消費者不在だな」と思わざるを得ません。さらに、事業者の損害補てんに150億円が支払われようとしています。これはすべて税金です。消費者ばかりが泣き寝入りです。補てんも必要でしょうが「これで本当にいいのだろうか」と思わざるを得ません。


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トレーサビリティの必要性を実感させられた汚染米とメラミン事件(第13回)

October 1, 2008 10:05 AM

 福田首相が突然辞任し、消費者庁や食品表示法の制定が宙に浮いてしまった格好になりましたが、麻生首相も消費者庁創設を訴えていますし、民主党も消費者権利院を創設することを訴えていますので、どちらが政権を取っても、消費者重視の方向性は変わらないでしょう。ただし、事故米(汚染米)事件を見ていると、内閣府(消費者行政担当)の果たしていることは、まさに屋上屋の様相を呈しています。
 司令塔として、各省庁を束ね指示命令している様子はまったくありません。これでは、消費者庁の先行きも非常に心配です。食品表示法制定に関しても、果たしてどこまで消費者重視の法律にできるのか非常に心配です。いずれにしても選挙結果が出てからになります。

 ところで、汚染米とメラミン事件は衝撃的でした。皆さんも「こんなことがあっていいものか」という憤りを感じたことではないでしょうか。私もまったく同じ思いです。それぞれの事件の詳細は省きますが、ここでクローズアップされたのが「トレーサビリティの重要性」です。

 農水省は、米のトレーサビリティと原料原産地表示の義務化と罰則の強化を法制化する方針のようですが、民間レベルでのトレーサビリティも必須の世の中になってきました。トレーサビリティといっても、国が実施している牛肉トレーサビリティのように、システム化する必要はありません。要するに、自分のところで使っている原材料の正体を正確に把握することです。

 汚染米もメラミンも、最終販売者の事業者も被害者であることは事実ですが、最大の被害者は消費者です。結果的に、お店やメーカーを信頼して購入していた消費者に、食用でない原材料が含まれた得体のしれない食品や微量といえども毒入り食品を販売したことになります。消費者にすれば、信頼していた事業者に裏切られたことになります。

 大手企業であれば、当然、トレーサビリティシステムの構築を検討する必要があるでしょう。中小企業であっても、仕入先に、そのさらに川上の仕入れ先の情報提供を求めていくことが必要です。そうした情報を開示しない取引先とは「縁を切る」くらいの心づもりが必要な時代です。

 さらに大手企業の場合、中国食品を扱うのであれば、生産者から自分のところに運ばれるまでに、異物や毒物、化学物質が一切入り込む余地がないような流通体制を構築することも絶対条件です。冷凍ホウレンソウや冷凍ギョーザでは、生産から製造まで、一貫した安全システムが構築されています。

 安全確保は、国だけに任せていては不十分です。国が実施している以上に、安全面には十分注意を払い、コストもかけて、消費者に信頼される企業になることが求められています。見ても食べても偽装を判別できない消費者にすれば、偽装防止・安全確保に関して、企業がどんな取り組みをし、どんな努力をしているのかを見て判断するしかないのです。

以上

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表示の不統一が生じる可能性がある東京都の条例(第12回)

August 4, 2008 5:27 PM

 東京都が各家庭に配布している<広報・東京都>の8月1日配布分で、「東京都は独自に食品の原料原産地表示に取り組みます」とし、表紙一面を使って冷凍食品の原料原産地表示義務化をPRしています。東京都消費生活条例を改正し、調理冷凍食品に原料原産地表示を義務化するものですが、内容は次の通りです。

【対象品目】
 国内で製造され、都内で消費者向けに販売される調理冷凍食品

【表示事項】
 原料原産地名

【表示すべき原材料の範囲】
 ①原材料の重量に占める割合が5%以上のもののうち、上位3位までのもの
 ②①にかかわらず商品名にその名称が使用された原材料

【表示すべき原材料の種類】
 ①肉・野菜などの生鮮食品
 ②魚の干物など生鮮に近い加工食品、かつお削り節、農産物漬物、うなぎ加工品、野菜冷凍食品

【表示の方法】
 ①包装のみやすい個所
 ②①の方法による包装への表示が極めて困難な場合は、問い合わせ先を明記し、情報提供をする旨を記載します。

【施行日・経過措置】
 ①8月末公示、公示の日から施行予定
 ②公示の日から9ヶ月間の経過措置を設けます

 この東京都の条例は、事業者や消費者に大きな影響を与える可能性があります。
 一つは、表示の不統一が生じることです。
 冷凍食品メーカーは、東京都に販売する商品だけに表示をすることは、手間やコストを考えれば負担が大きくなるので、当然、全商品を東京都仕様に合わせることになります。

 一方、東京都以外の道府県では、調理冷凍食品に原料原産地表示がある商品とない商品が混在する可能性があります。そうなると、食品表示の不統一が生じ、消費者はどうして表示してあるものと表示していないものが混在しているのかよく分からず、表示されていない商品に不信感を持つ可能性があります。
 小売店側も、表示の不統一を解消するために、納入業者に東京都仕様を取り入れるように要求するかもしれません。そうなると、中小地元業者には過大な負担が生じる可能性があります。

 こうした東京都のやり方に対し、同じように独自の表示条例を作る自治体が出てくるかもしれません。そうなると、ますます都道府県単位での表示格差が生じることになります。
 もう一つ、実効性があるかどうかも疑問が残ります。

 冷凍食品メーカーは、原材料の原産地は頻繁に変わる可能性があるため、その都度、表示を変更しなければなりません。東京都だけのために、膨大な手間とコストをかけなければなりません。そこで、包装に表示が困難な場合はホームページなどで公開することが許されています。非常に困難な場合はどんな場合か、その都度東京都が判断することになるのでしょうが、条件を甘くすればするほど、ほとんどのメーカーがホームページのみの公開になる可能性があります。

 そうなると条例を作った価値が非常に低くなるでしょう。消費者は、あくまで買うときに表示を見たいのです。この場合も、包装に表示するメーカーとホームページに表示するメーカーとの表示の不統一が生まれます。

 地方自治体の縦割り行政の弊害が、食品表示をますますわかりにくいものにする危険性があります。表示は、国で一括して法制化するべきです。

以上

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負担と責任がのしかかる消費生活センターは本当に機能するのか(第11回)

July 10, 2008 10:08 AM

 来年創設される消費者庁に関連して、全国の消費生活センターの新設や機能強化のために、来年度予算で総額70~80億円を計上する方向だということです。

 消費生活センターは、全国で538ヶ所ありますが、市町村で見ると383ヶ所あるだけで全市町村の約79%は未設置です。さらに、国民生活センターとオンラインで接続している「パイオネット」に参加している消費生活センターは、384ヶ所約71%にとどまっています。こうした実情を改善するために、消費生活センター新設に年間1000万円、パイオネット参加に年間500万円、相談員の増員や研修の充実に年間1000万円を地方自治体に交付する計画です。

 各地の消費生活センターがすべての消費者問題の窓口になるのですから、資金を提供するのは当然のことです。もっと投入すべきだとは思いますが、それ以上に、各地の消費生活センターが抱える問題は深刻です。それは「十分な知識を持った専門員がいない」ということです。

 消費生活センターの仕事の9割以上が悪質商法対応です。相談から解決までに相当な時間を要します。消費生活センターで働く人たちは、ほとんどが女性の相談員で、悪質商法に関してはプロ集団といえます。ところが、食の安全や食品表示、偽装事件については、ほとんど一般の消費者と変わらないレベルと考えなければなりません。
 例えば、表示110番にかかってくる内部告発や表示の相談については、その業務をこなせる人はほとんどいません。他にも、異物混入があった場合、公園の遊具で子供が怪我をした場合等々、消費者に関する相談や数え切れないほどあります。

 今でも、そうした相談・苦情等は時々寄せられていますが、その都度関係先に連絡したり、紹介したりしています。消費者庁創設後も同じような対応をとることになるのでしょうが、今までは、あくまで食品表示は農水省、食の安全面は保健所です。

 しかし、4月からは主管はあくまで消費者庁であり、その最先端の窓口は消費生活センターになります。司令塔ですから、単に案件を関係先に紹介すればいいというものではありません。自分たちが主役となるのです。どのように解決するのか、どのような解決がされたのかを、すべて指示し把握しなければなりません。しかも、24時間体制で臨む方針も示されています。
 すべての窓口になるので、消費者から直接相談があるだけでなく、警察や保健所、農水省関係からも連絡が入ります。その仕分け作業も膨大なものとなるでしょう。

 今の消費生活センターは、悪質商法の処理だけで手一杯の状況です。それ以外の業務をこなせる余裕はありません。悪質商法以外の専門家もいません。しかも、相談員の方々は公務員ではありません。公務員としての権限も資格も持っていません。もちろん、給料も公務員より少なく、サービス残業も多くなっています。かなり過酷な仕事といえます。そこに、「電話があったのに処理しなかった」とか「連絡が遅い、たらい回しだ」といった責任だけを押し付けられては、相談員の方はやっていられません。
 少なくとも、悪質商法担当と、それ以外の担当をわけて対応するべきですし、食の安全や偽装表示の専門家を早急に育成しなければ、中国産ギョーザ食中毒事件や各種偽装事件などの処理は難しいでしょう。
 今のままでは、縦割り行政の弊害以上に現場の混乱が起き、司令塔としての職務を果たすことは無理でしょう。人、物、金の投入は不可欠です。

●消費者さん へ
 おっしゃるとおり、偽装はうんざりですね。偽装をなくすためには、このコラムでも述べていますが、罰則の強化と体制の整備が不可欠です。表示問題は、今のところ消費者庁に全面移管されます。その時に、本当に消費者の立場に立った法律を作ることができるかということにかかっています。期待するしかないのですが、今の政府で本当にできるのか、不安も大きいですね。

posted by 垣田達哉 at 10:08|コメントを読む (0)