(下書き)物証の逆襲・DNA再鑑定[清水潔]
(2009-05-12 19:00:00)

最新の鑑定技術が出した答えは"菅家受刑者は、犯人にはなり得ない"というものだ。それは、まだ未熟だったDNA鑑定技術が、格段の進歩を遂げ、封印された物証に舞い戻り、真犯人を指し示すという、すさまじい逆襲劇だった...。
「北関東連続幼女誘拐・殺人事件」のカギを握る「足利事件」。4歳のマミちゃんが殺害されたこの事件が、ついに、劇的な展開を迎えた。

 ACTIONでは、これまで、この事件の捜査の問題点を再三お伝えしてきた。逮捕された菅家受刑者の自供の不自然さ、唯一の物証、DNA鑑定の危うさなどだ。
逮捕当時のDNA型鑑定は、MCT118という方法で行われた。その結果、現場に残された犯人の遺留物とされる体液のDNA型と、菅家受刑者の型はいずれも「18−30」とされてきた。(アレリックラダーマーカー 対応による)。

 DNA型の一致は、科学捜査の名の下、鉄壁の物証とされ、最高裁で菅家受刑者の無期懲役が確定させたのである。確かに一般的には、これ以上はない程の証拠に思える。だが、取材を続けていくうちに、様々な疑問が露呈してきた。例えば、当時の鑑定技術の水準は、現在に比べ明らかに未熟だったことや、「型一致」の絞り込み精度も相当に低かったことなどだ。

 最新DNA型鑑定による精度は、理論上"一京分の一"という天文学的精度まで上がっているという。その最新の技術で実施されたのが、「日本初のDNAの再鑑定」だった。その鑑定の結果、犯人と、菅家受刑者のDNA型は一致しなかったのである。

 再鑑定は、検察側、弁護側推薦の二人の鑑定人の手により、数通りの方法で行われたという。当時の遺留物である犯人の体液と、刑務所に収監されている菅家受刑者の血液や粘膜が資料とされた。当時と同じMCT118法でも行われ、その結果、菅家受刑者のDNA型は、なんと
「18−29」。そして、犯人の型に至っては「18−24」だった。旧鑑定で一致したとされるはずの「18−30」型そのものが、完全に"消滅"してしまったのである。
 
 これはいったいどういうことなのか。
 そして、もう一つ重大なことは、再鑑定により、「真犯人」のDNA型が判明したことだ。STRなどの別の鑑定法も実施され、明らかになったという。

  我々が、この事件捜査に問題を感じ、延々と報道してきたきっかけ。それは、わずか20キロ圏という狭い範囲で連続した、類似性の高い連続事件で、なぜ足利事件だけが、解決したのか?というシンプル疑問からだった。

 実は菅家氏は、91年の逮捕直後に、足利市で起きた別の事件、マヤちゃん、ユミちゃん事件の2つも、"自分がやった"と自供した。だが、結果、検察はマミちゃん事件しか起訴しなかった。3件の自供をなぞっても、どの現場でも菅家受刑者の目撃情報はゼロ。「秘密の暴露」と呼べるものも無く、肝心の自供すら、菅家受刑者は公判の中で全て否認したのである。

 結局、このDNA鑑定だけが唯一の物証として残った。つまり、3件の殺人を自供したにも関わらず、たった一つの物証しか存在しないという、危うい捜査結果だったのである。そして、その物証は今回の再鑑定で崩壊したのだ。

 真犯人のDNA型は判明した。だが、事件から19年が過ぎ去り、マミちゃん事件はすでに時効を迎えている。今後、DNA型から真犯人に到達できたとしても、もう起訴はできない。

 菅家受刑者は、逮捕後の早い段階から、DNAの再鑑定をして欲しいと、訴え続けていた。だが、その声を黙殺し"犯人にはなり得ない人物"を、長く刑務所に留め置き、時効を招いてしまった、捜査と司法関係者。その責任は重大と言われても止むを得ない。

 これまで、1年半、20回以上もACTIONでお伝えしてきた「北関東連続幼女誘拐・殺人事件」。そのラストを、我々は何度もこう締めくくってきた。
"事件の犯人は、今もどこかに潜んでいる"と。                   

(清水 潔)


過去の「北関東連続幼女誘拐・殺人事件」ブログはこちらから

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